動物用医療保険は得か?損か?

飼主様が動物の保険に加入して、得をするか損をするかの分岐点は、
 50%の保険の場合は、(支払った保険料)÷0.5
 70%の保険の場合は、(支払った保険料)÷0.7
です。

つまり、
 50%の保険の場合は、支払った保険料の2倍の金額の病気や怪我をしないと元を取れない、
 70%の保険の場合は、支払った保険料の約1.4倍の金額の病気や怪我をしないと元を取れない、
というこうとです。

例えば、50%の保険の1年間の保険料が24000円(月2000円)の場合、
1年間で、24000円÷0.5=48000円 分の病気や怪我をしないと、元を取れません。
例えば、8年間保険に加入し続けた場合だと、24000円÷0.5x8=384000円 分の病気や怪我をしないと元を取れないということになります。

実際の保険料は、年24000円よりも、もっと高いことが多いです。

例えば、ダックスフンド(ミニチュア)を飼うことになって、アニコムの50%の保険に0歳から7歳まで8年間、年払いで保険料を払い続けると、支払い総額は266040円
(「プラン別 一般契約 基本保険料表・品種表」 ふぁみりぃ50%プラン、Bクラス)
ですから、損得の分岐点は、
266040円÷0.5=532080円、
8年間で53万2千円分の病気や怪我をして、やっと元を取れる、
ということになります。

70%の保険なら(ふぁみりぃ70%プラン、Bクラス)、
8年間の支払い総額は、360910円、
損得の分岐点は、
360910円÷0.7=515585円
8年間で51万5千円分の病気や怪我をして、やっと元を取れる、
ということになります。

50%は53万2千円、70%は51万5千円で、損得の分岐点は、ほぼ同じなのに、支払う保険料は、26万6千円と36万円ですから、約10万円も違います。

つまり、50%保険は5割自己負担、70%保険は3割自己負担ですから、一見、70%保険の方がお徳のように感じますが、実際は8年間で10万円も多く保険料を支払っている(支払わされている)ことになります。


保険に加入して、元を取れるかもしれない場合とは、
・若くしてアレルギーなどの慢性疾患にかかって、年間に6万円以上の医療費が毎年かかる場合(上記ダックスフンドの例)、
・運悪く結果的に(8年間で)、骨折や開腹手術を必要とする病気などの大きな怪我や病気に、2度も3度もなってしまった場合、
・かかりつけの病院の診療費が高めの場合(診療レベルや治療方針によって検査及び治療内容が違ってくるため診療費が異なる、同程度の治療でも自由診療のため病院によって診療費が異なる、都会か田舎かの地域差によっても診療費が異なる)、
・保険に加入して最初の頃に大きな怪我や病気にかかり、一旦治った後、何らかの理由で1~2年後に急死した場合、
などです。

化学物質(添加物)がたっぷり入っている市販のおやつやデンタルガムや、飼主様が食べるための人の味付けの食べ物を毎日与えたり、必要以上に食餌やおやつを与えて肥満にさせたりするような、病気や怪我になりやすい食生活をさせている場合は、運が良ければ(?)元を取れるかもしれません。

食生活に気をつけている場合は、1頭より2頭、2頭より3頭と、保険に多く加入しているほど、元を取れる確率は下がります。

また、何年間も保険料を支払っても、動物が急死した場合は、飼主様が保険料を回収する機会はその瞬間に失われ、保険料は保険会社の利益になります。
しかし、仮に、保険会社に支払ったつもりで、年に1回、例えば動物のために作った通帳に保険料と同程度のお金を積み立てておけば、動物が急死した場合でも飼主様の貯金として残ります。

高齢になると、確かに病気になりやすいですが、そこから先の医療費は積み立てていたお金から支払うことが出来ます。

積み立てておけば、運悪く、大きな怪我や病気をしても積み立てたお金から医療費を支払うことが出来ます。
若くして大きな怪我や病気になった場合は、積み立てられたお金が少ないですが、何年間も保険料を支払う予定だったのですから、1年目で怪我や病気になるか、8年目や10年目でなるかの違いでしかありません。

結果的に高額な医療費がかかった場合、足りない分は手出しになりますが、保険に加入していた場合と比べて損をするケースは、上述のようにあまり多くはないでしょう。

大きな怪我や病気で、その時に50万~100万円の医療費がかかっても、家族の貯蓄から支払う余裕があるなら、わざわざ動物用に積み立てる必要もないでしょう。浪費して貯金の管理ができないのであれば積み立ててください。

2回も3回も高額な医療費を必要とする病気や怪我になった場合のことが心配で、その滅多にない状況になった場合に、「運が悪かった」、或いは「飼い方(食べ物の与え方)が悪かった」などとあきらめる気持ちの余裕がなければ、積み立てるより保険に加入しておいた方がよいでしょう。

生後1歳前後までは、
・食欲が旺盛なので、異物を飲み込んだり、ゴミ箱をあさったりして、腸閉塞を起こしたり、
・元気で活発に動いたり走り回ったりするので、高いところから落ちたり、抱いていて誤って落としたりして、骨折したり、
するなどの事故が多いので、購入時に保険に加入していたのであれば、2~3年目まで継続して加入しておいた方が無難かもしれません。
特に、初めて動物を飼う飼主様は、子犬・子猫の餌の与え方、取扱いに慣れていないので事故が起きやすいようです。事故の起きやすさは、子犬・子猫の性格も関係していて、活発に動く元気な子犬・子猫ほど、事故が起きやすいです。

相互扶助の精神で、元を取ることにこだわりがなければ、保険に加入しておくという選択でよいでしょう。飼主様が元を取れなかったお金は、保険会社の利益になりますが。


診療明細を保存している飼主様は、保険会社の利益にどのくらい貢献してきたか、一度計算してみてはいかがでしょうか?

50%保険の場合:
 (診療費の合計)>{(保険会社に支払った保険料の合計)÷0.5 }
70%保険の場合:
 (診療費の合計)>{(保険会社に支払った保険料の合計)÷0.7 }

ならば、得をしていることになります。
(※)「診療費の合計」は、保険に加入していなかった場合に飼主様が支払う費用です。病院の受付けで清算できるタイプの保険のアニコムやアイペットに加入していた場合は、保険分が差し引かれた自己負担分(5割、または3割)が受付けで請求されます。


ご参考までに、保険に加入することを薦めるサイトと薦めないサイトへのリンクを貼り付けておきます。
そもそもペット保険は入ったほうがいいのか?家庭でのペット貯金と比較してみた
ペットに保険は必要ない!?その理由をお話しします

テレビでは人の医療保険、がん保険のCMが盛んに放映されていますね。
参考リンク

ちなみに、生命保険の中で利用価値があるは、
子供が自立するまでの間、世帯主の万が一に備える保険」(「万が一の場合、○千万円が支払われます」、あるいは「毎月○万円が、故人が60歳に到達したはずの年まで支払われます」といった内容の保険)、つまり、「定期保険」「収入保障保険」だそうです。
(「生命保険の嘘:「安心料」はまやかしだ」p204)

2018年11月09日